しあわせへの助走

生きていて感じたことを気の赴くままに書いていきます

夜間飛行

 

真夏日が続く休日の朝方。前日早めに寝てしまった私たちは早朝覚醒した。ちょっとこれは寝れないな、と思って、二人して散歩に繰り出す。朝5時の外気は暖かくて、歩くとじわじわと汗をかいていく。連日の暑さで朝も気温が下がらないのだ。流れ落ちるわけではないけれど、じっとりと肌を湿らせる。風でもあれば気持ちいいのだろうけど、風は吹かない。

昼夜関係なく交通量の多い、日本の動脈となっている環状線も、休日の朝は往来が少なくて静かだ。

大通りの交差点の信号を渡ろうとすると、そこには朝焼けと空を斜めに縦断する飛行機雲が幻想的な風景を作り出していた。温いアスファルトの上を這うようにして、地表に依存して移動するしかない私たちは、空を飛ぶことへの憧れを募らせる。

明るくなっていく空と 伸びる飛行機雲を見て、相手はサン=テグジュペリの話を始めた。夜間飛行という本があってね、僕も読んだことないんだけど、という前置きで始まった。私も昔、星の王子さまを薦められて、読まなかった過去があるので人のこと言えないと思いながら話を聞く。サン=テグジュペリパイロットとして活躍しながら小説を書いていたこと。最後は飛行中に消息を絶ったことを教えてくれた。もしかしたら一般教養なのかもしれないが、いつも狭い世界にこもりがちな私は知らなかった。なんだかロマンあふれる最後だな、と思って強く印象に残った。

 

夜のあいだは暗くて曖昧だった天と地の境目も、だんだんと明るくなって、手が届かないよと知らしめられる気がした。