しあわせへの助走

生きていて感じたことを気の赴くままに書いていきます

歯2

kyusuigy.hateblo.jp

前に書いた文章から受け継ぎ、体型化して書いておくが、所詮共通点は歯の話というところだけである。

3
突然だが私の歯は足りない。
折ったりしたわけでもなく、先天的に足りないようで、歯科検診や初めて行く歯医者では驚かれたり面倒がられたりすることが多い。足りないのは前歯が多く、その様相は強力な台風の過ぎ去った後の木のようにボロボロだ。あまりの悲惨さにむかし医者に、本数さえきちんと揃っていれば、キレイに並んでいただろうにね、と全く慰めにもならない話をされたことがあった。
そんな私の歯だったが、今まで治さなかった理由は色々ある。まずお金、そして痛み、さらにきれいになった所で大した問題じゃない、と思っていたことだった。お金は、6歯以上足りない場合保険適用で治せると知りクリアした。次に痛みは、耐えるしかないのだけど、多分私は痛みに強いタイプの人間だ。なにより最近太ってきて、歯が痛くてたくさん食べれない位が丁度いい気がしてきた。最後だが、最近恋人と別れたので、見返す訳ではないけどバネにしてキレイになりたいと思うようになった。
そんなこんなで歯医者へ相談に行った。色々話を聞くと、全部矯正+まともな歯を入れたら、500万以上すると聞きうろたえたが、保険適用の範囲内でブリッジしたらとりあえず埋めることはできるらしいと知った。しかも値段が全然違う。ブリッジは、今歯がない部分の両側の生えている歯を一部削り、橋を渡すようにして埋める方法。インプラントは歯茎を切って骨にドリルで穴をあけ、歯をネジで埋め込む方法だ。正直言って、インスタで見ている歯の治療動画を見てブリッジは怖くて避けたかったが、それ以上にインプラントの方が怖くて仕方なかった。美しさはブリッジ<インプラントだが、万が一ブリッジがダメならインプラントにすればいいけど、逆は出来ない。またどちらも矯正よりは早く問題が片付く。それに本当にきれいにしようと思ったら、歯を何本も抜かないといけない。入れ歯の質も保険適用だと本物とは程遠くはあるが無いよりはマシだし、今はそこまでは無理なのでちゃんと仕事してきれいな歯を入れられるように頑張ろうと思った。そんなこんなで、私の歯の治療方針は決まった。
数回治療に行っただけなのに、今日は仮歯を入れますね、と医者に言われた。私はびっくりしたし、同時にめちゃくちゃワクワクした。恥ずかしながら、前歯がきちんと整うのは20年位ぶりだ。麻酔をされ、先生のミスで上唇にも麻痺がきたりしたがワクワク感で許せた。かなり長時間口をあけることが必要だったため、口の端からよだれが流れでても、映画の予約をしていたものの上映開始を治療しながら迎えても仕方ないなと思えた。診療台で寝ころがりながら、入れ歯の微調整の音でタイミングを図り、口を開けたり閉じたりする機械になった。
ドキドキしながら何度も開け閉めを行うと、ようやく設置のための薬剤をつけて、装着されて医師から指示を受けぎゅーっと噛んだ。もう少しだと思うと顎は疲れたけれど顔はほころぶ。口のところだけ穴が空いたシートを顔に被せられているため、表情は伝わってない筈だ。
とうとう足りなかった偽物の歯と対面した。初見で思ったのは不恰好すぎて辛い…ということだった。歯の並びが良くないから仕方ないのだが根元の形も良くない。歯の大きさもバラバラ。ショックだった。一挙にテンションが下がって、気になりすぎて、隙さえあれば鏡で歯の形をチェックしてしまう。でも歯抜けで間抜けでいるよりはマシだから…と私は病院を後にした。